・オープニングタイトルではいきなり背広姿の主水。スクーターにのる印玄、街中で新聞を読む市松というように、現代日本の社会情勢を細かいカット割りの中に見せるという、時代劇としても奇妙でさすがに必殺と思わせるものがあった。
・内容的にも完全に主水のキャラクターは完成し、名実ともに主役の貫禄が出てきた。 
・必殺の中でも強烈な印象となってファンの心に焼きつくこととなる市松と主水の対決シーン。
必殺20(15年)の歩みより
・中村主水がチームのまとめ役から完全に主役になった作品。
・オープニングタイトル・エンディングの字幕などにおける特徴も見逃せない。とにかく主水の主水による主水ファンのための番組と言っても過言ではない。
・市松は沖雅也によりる二枚目のキャラクターであるが棺桶の錠よりも評価が高い。錠は沖以外の役者でもできるが、市松は沖以外ではこなせないキャラクターであるというのが大きな理由のようである。
必殺ポスター全集より
・仕置人以来の出演の沖雅也演じる市松は、主水と常にぶつかり合い、お互いを信頼していない。 
必殺大百科より
同心、「中村主水」の魅力が満載されている作品。

奉行所では昼行灯と呼ばれているが、昼行灯なりに一生懸命やっている描写がよくある。で、それなりにちゃんと手柄を立てているのだが、マイナスの部分で帳消しにされてしまっている。マイナスばかりが目立つ後のシリーズとは異なる。

この作品の注目点はなんと言っても市松というキャラクターに尽きる。

彼は生まれついての凄腕の殺し屋である。主水が市松の仕事を見たことが縁で仲間になるのだが、市松は仕置人ではない。仕置人の一面も持つ、完全な「殺し屋」である。それは第2話で捨三が市松を仲間に加えた主水に対して「あっしらは「仕置屋」で、あいつ(市松)は殺し屋」といって不満を述べる描写があることでもはっきりしている。それに対して主水は「だが腕が立つ」といって、捨三の不満を抑える。

そして市松が主水グループ以外の仕事をする事を黙認している。確かに一度は殺し合い寸前までいってお互いに一目置いているとはいえ、これは異例である。これには一度裏稼業に対して自我を崩壊させてしまった主水の弱さが見え隠れする。市松という人物を仲間に引き入れることで、自分の選択に間違いがなかった事を強固なものにしたかったのであろう。

市松も市松で、主水たちとうまくやっていこうとする気がないので、最初はなにかとギクシャクするが、陽気で裏表のない印玄やきちっと仕事はする捨三とは中盤以降、それなりの交流を持つ。といっても、仲良く酒を飲んだりするようなことではないが、見ている方としてはなかなかいい関係。

主水とは、最期まで深い部分での交流は見られなかった。と言うか、主水が完全に一歩引いていた。が、最期の最後で市松と主水はお互いの自我をぶつけ合う。

市松が「殺し屋」という設定が、見事なまでに生きに生き、他のシリーズでは見られない結末を迎える第5話「一筆啓上幽鬼が見えた」は仕置屋ならではの名作。
平均視聴率
関東 12.4% 関西 20.4%
(明星デラックスTVSPより)

キャスト

中村主水(藤田まこと)
南町奉行所:定町廻同心。糸井貢を失ったことにより、裏稼業に対して自我崩壊中の主水。そんな中、おこう・市松との出会い、主水の裏の顔を知っている捨三とその友達の印玄とともに、また裏稼業を開始する。表では、奉行所内をいろいろ駆け回り、へまをやったり、手柄を立てたりと、奉行所内の主水が生き生きしているのが見所か。

この作品の主役、
市松(沖雅也)
表向きには竹細工で生計を立てているが、生まれついての殺し屋。主水に殺しをみられ、主水を殺しに掛かるが、逆に主水の貫禄に圧される。そして主水の誘いに乗り、主水グループに加入することになる。なぜか子供に弱い。

印玄(新克利)
坊主頭、好色、屋根落とし。職業坊主。捨三の友達で、憂鬱症気味。性格は単純。男気もある。殺人快楽症とでもいうんでしょうか、殺しに対して楽しんでいるような素振りを見せることも。

究極の情報係、
捨三(渡辺篤史)
今までの情報係のイメージを一新するような活躍を見せる。過去に主水に対して恩があるらしく、それが尊敬にまで発展したような行動を主水に見せることも。職業は銭湯の釜場番。

おこう(中村玉緒)
女髪結い。なぜか主水の正体が仕置人だと知っている。主水に裏稼業復帰を執拗に要請する。金にはうるさいが、その金の使い道はグループが崩壊するときに明らかになる。

中村せん&中村りつ
主水とのやりとりも増え、笑える場面も多くなる。主水と二人きりの時、りつは主水に優しくなる。

亀吉(小松政夫)
主水の手下の十手持ち。市松に殴られたり、捨三にどつかれたり、十手持ちの風格に欠ける。

お初
主水が心のよりどころとして思いを寄せている、大衆食堂の女の子。最期までセリフが棒読みであった。

筆頭与力、村野さま
主水たち同心を管理する役。最初、主水に厳しかったが、徐々に打ち解けて、楽しいやりとりを見せたりする。が、最終回で主水の不手際の責任を取り、主水共々現職を解かれる。