・シリーズ中、もっとも主水の風体がむさ苦しく哀れで貧困が漂っていた、家庭の生計はどん底であり、せんんとりつも内職に励むといった状態で家庭も崩壊の兆しが見えるという設定である。
・番組のムード全体がこんな調子であるから(暗い)、視聴率にも低迷を続けたが、かたくなにテーマを変えることなく、貫き通したことは偉大なことである。
必殺20(15年)の歩みより
・劇中の人間関係は、仲間意識などはあまり感じられない寒々しいほどドライなものであった。 3者を結び付けているのは完全に金であった。
・酒を飲むようになるのもこの頃からであり、左遷されたサラリーマンの悲哀がよく描かれていた。
必殺ポスター全集より
・タイトルの仕業人は5万二千通もの一般公募の中から選ばれたもので、かつて「仕掛人」の当時「紋次郎」と視聴率を競い合った中村敦夫を迎え、灸師のやいとや又右衛門のクールな二枚目はさは、市松、錠と並ぶ人気があった。
必殺大百科より
「中村主水」のストレートな感情が表現されている作品

ついに「牢屋見廻同心」まで降格されてしまった主水。全3作と全く違った面をみせる。特に明るさの目立った「仕置屋」とはまるで別人。酒を飲み始め、間借り人には思いっきりセクハラ行為の連続。「人間:中村主水」を見るのならこの作品。

私が一番お気に入りのシリーズです。なんといっても全体に広がるムードが好きです。 暗いというか、薄曇りというか・・・。決して晴れることのない世界であるが、それでも懸命に生きてゆく人間が描かれている。ここまで人間描写がある意味素直に描かれているシリーズはないでしょう。

実はこの作品が私の「必殺」初見作品(再放送)です。丁度中学3年生の時でした。何の気無しに付けたテレビで放映されていました。その内容に衝撃を受けて、16年。こんなサイトを作るようになりました。

劇中から生活感を感じられないようにするのが人気ドラマの必須要素のひとつかもしれない。二十歳そこそのこのOLが、おしゃれなスーツに身を包み、都心のマンションぐらし。一昔前にはやったトレンディー(死語)ドラマの登場人物はみんなこんな感じであった。ドラマとは現実から逃避するほうが自然な方向である。だから視聴者はそれにあこがれるのである。

現代劇でさえ、生活感を消そうとしているのに、時代劇がリアル生活感を持つ。このギャップが仕業人の魅力である。必殺至上最高の人気を誇った、「必殺仕事人V」では、見事に生活感が消えている。殺し屋にしても悪人にしても。
「必殺仕業人」を観て、拒絶反応を起こす人も多いと思う。
また一方で、その魅力に取り憑かれた人間も必ずいるはずである。
平均視聴率
関東 11.6% 関西 18.3%
(明星デラックスTVSPより)

キャスト
中村主水(藤田まこと)
南町奉行所:牢屋廻同心中村主水。必殺シリーズの中村主水でも、ひときわ異彩を放つのが「仕業人」の中村主水。前作「必殺仕置屋稼業」での最終回で、市松を逃がすためにわざとへまをした主水に待っていたものは、最下級職への降格であった。
裏稼業での主水の変化も見られる。仕置人の底知れぬ怖さ、仕留人の余裕というか、風格みたいなものはほとんど感じられない。さらに前作「仕置屋稼業」とはまるで別人である。仕置屋でみせたあの明るさは微塵もなくなっている。
茶色の羽織をまとい、襟巻をして酒を飲む主水。
間借り人の千勢先生に対するいやらしさは、これまた仕置屋のお初ちゃんに対しての姿勢と対極。
中村主水がどん底の生活で初めて見せた人間らしさ。感情はストレートに表すが、繊細な面も多々見せる。
そして殺しも変わった。とにかく「殺す」ということを全面に打ち出し、”剣の達人”といったイメージはない。殺し屋と言う感じ。襟巻をした理由は、「あまりにも寒かったから」だそうです。

赤井剣之介(中村敦夫)
この作品の主役。元沼木藩の侍。市松に主水を紹介され、主水の仲間になる。 赤井剣之介は生活のために人殺しをしている。
刀を捨てた剣之介に残されたのは、己の両手。カミソリで相手の髷を切り、そのほどけた髪の毛を首に巻き付け、相手を絞殺する。
殺した金で女を抱き、贅沢な食事をするわけでもない。
かといって市松のような殺し屋として生まれ育ったわけではない。
侍を捨てる理由になったお歌に対しての愛情は、ストレートで飾りっけが感じられない。そういうところがいい。
侍を捨てた剣之介も心のどこかに武士へのこだわりを感じさせる事がある。

やいと屋又右衛門(大出 俊)
スケコマしのお灸医。これまたちょっと変わった性格。基本的には優しいが、醒めたところもある。腕っ節はからっきしという、珍しい仕事師。

究極の情報係、
捨三。(渡辺篤史)
仕置屋シンドロームになってしまった捨三。第1話から「市松や印玄」を懐かしんでいる。釜場番から洗濯屋に転職。

中村せん&中村りつ
窮乏した中村家。せんとりつは傘張りが日課。その不満を主水にぶつけることが多くなる。今回は、間借り人の登場により、間借り人との交流面も描かれる。

千勢先生:中村家の間借り人。八丁堀界隈の子供相手に塾を開く。主水のいやらしい行動を軽くいなす。

出戻り銀次:小伝馬町の牢屋敷がお気に入りの囚人。主水と馬が合い、たまに主水の役に立つ。